
何事にも最初というものがある。
登山であれば信仰登山が行われ、かの剣岳は弘法大師も登頂を断念し、その後陸軍参謀による計測登山が記録上の初登。ところで信仰登山で良く目にする人物といえば槍ヶ岳開山で知られる播隆上人。弘法大師の頃より1000年近くも後のこととなる。
いにしえの登山というのは修験と密接に結びついてくる。神は春になると山より里へ降り立ち、多くの実りをもたらし、秋になると再び山へと還ってゆく。修験という存在はこれに相似た存在だ。
いや、相似たというよりも同等だったかもしれない。
修験(役行者)は山の神と化し、異界である山中で験を修め、山神と共に里に降り立ち実りをもたらし、そして秋になると再び山に姿を隠す存在だった。役行者はつまり山の神そのものだったのかもしれない。
修験・役行者には密教色が色濃く配合されており、密教と言えば弘法大師(空海)となる。かの大陸で空海の師となった者のひとりが原始キリスト教である景教の僧だったと伝わっている。永遠の命獲得を標榜する景教(原始キリスト教)に伝わる錬金術や聖書のエッセンスがこうして空海に伝わり、永遠の命を獲得する知識が金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅に二分され、さながら音楽で言えば演奏技法と楽典という両輪を成すがごとくに今に至っている。
そういえば縄文時代の祭祀跡が日本各地の山頂に見られるが、空海よりはるか昔の縄文の頃より山は神聖な場所だったのだろうと想像できる。丹沢の大山阿夫利神社も、神社建立の前には縄文時代の祭祀跡があった。
しかし今ではそうした聖域・サンクチュアリという意識は皆無となり、レジャー登山が大勢を占めて久しい。(富士山の糞尿問題もひどいもの。積雪期、馬返しの茶屋横からルート外の森の中を歩いていたら
雪の中に人糞・トイレットペーパーの地雷原が広がっていて目を覆うほどの光景だった)
<山中で出会う、もっとも危険で脱出困難な『地雷原』> 確かに山中に長く身を置くようになると都会暮らしとは違う感覚が呼び起こされることがある。夜歩いているとゾクゾクと総毛立つことがあるが、それが動物が放つ殺気のためであることもやがてわかった。意味もなくゾクゾクするときに、注意深く周囲を観察すると必ず動物が潜んでこちらを見ているからだ。きっとこれが武士の言う殺気という感覚なのかもしれない。殺気は相手に伝わるものなのだろう。
だからもしもスナイパーであれば、殺気を持たず、冷静冷徹に標的を狙って引き金を絞る、という動作に集中することで殺気は消すことができるのかもしれない。相手憎しの殺意むき出しはスナイパー失格ということだ。
ともあれ、山中に身を置くと、こうした原初の感覚が研ぎ澄まされるばかりか、体と心の毒素が排出されて岐路につく頃にはきれいさっぱり、生き返ったような気になれる。山の効能の一面だ。
街暮らし故の非自然界の垢は年齢と共に加速度的に染みつくようになる。これは、たとえばゴアテックスの防水効果が経年によって衰えるような、そんな感じだろう。しかし年齢と共に山に入る時間はどんどん制約されることになり、気づけば長いこと山に行ってない心身は非自然界の垢にまみれて疲弊しきっていたりする。
あぁ山に行きたいなぁ。
そんな時に家族を伴って一泊二日で気軽に自然に身を置けるのがキャンプだろう。自然から遠ざかった時代に自然回帰の志向が働きキャンプが始まったのかな?なんて思ってしまうけれど、あながち間違いでもなさそうだから面白い。
日本で初めてのキャンプは1920年のこと。1920年代と言えば大正時代、第一次世界大戦後の産業界の勃興期と戦後不況の時代で、自然よりも人工色が色濃く漂い始めた時代。
キャンプは六甲山麓でYMCAによって行われた。YMCAはヤングマン・クリスチャン・アソシエーション。YMCAの紹介文によると・・・
1920年、六甲山麓で最初のキャンプが行われました。大阪YMCAが少年たちのために試みた、松林の中での2週間の簡易天幕生活キャンプで、これが日本における最初のキャンプとなります。この活動はまたたくまに全国に広がっていき、現在では年間を通じておよそ22,000人の子どもたちが全国各地でYMCAキャンプを体験しています・・・(後略)
ということらしい。ということは来年2020年で、日本で最初にキャンプが行われてからちょうど100年目になる。何事も10年目、50年目などは大きな節目になることが多いけれど、キャンプはなんと『キャンプ開催100年目』の節目。100年といえば1世紀。キャンプ好きなボクであれば、これは記事にして告知するしかないでしょう。
2020年はオリンピックイヤーだけでなく、日本キャンプ100年目の年。さ~てがんがんキャンプに行きましょう~
□YMCA キャンプ100周年ページ■こちらは山の怪談話での山の神
・山の神関連記事「山の怪談 ウサギ姿の山の神」
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