
弓張平オートキャンプ場は月山山麓の標高634mの高原にある。その高原は月山の裾野にあたり、月山湖と五色沼のちょうど中間に位置する。
今回の目的は月山だった。かれこれ20年ほど前に見た映画「月山」に感銘を受け、その後原作の森敦著の月山を読み、月山への憧れをずっと抱いていた。そして月山に登るときは、近くのキャンプ場で一泊しようとなんとなく目星を付けていたのが「月山・弓張平オートキャンプ場」だった。
ここで過ごしたのは、2015年の8月お盆翌週の平日。目的は登山だったため、キャンプ場についての事前情報は住所とペットOKということのみ。登山を終えた午後3時頃、「時期的に子供たちはまだ夏休みだから、けっこうキャンパーはいるだろうな」と思いながら向かってみると、驚くほど広々自然豊かなキャンプ場の利用者は、なんとゼロ。山梨の道志エリアでは考えられないような完全独占状態だった・・・

サイトはどこでも構いませんよ、というスタッフの言葉にぶらり散策してみると、湧水が小川となって流れる場内には広大なフリーサイトと木立の奥まで続くオートサイト、そして気持ちよさそうなコテージもまるで別荘地のようにレイアウトされている。
この時に発見したのがキャンプ場内を通っている「六十里越街道」という古道。調べてみると、湯殿山はその昔、西の伊勢に対し東の湯殿といわれた信仰の山。1200年前にこの湯殿山参りで賑わったのが出羽の古道「六十里越街道」だった。この信仰とは、日本で生まれた山の宗教である修験。自然崇拝を根幹とし、ある種呪術的な要素が色濃い宗教。そしてこの湯殿山は羽黒派の古修験道というもので、開祖は能除仙(のうじょせん)という正体不明の役行者である。
つまりこのエリアに来て登山するのであれば、熊野古道ならぬ「六十里越古道」で湯殿山を筆頭に出羽三山に登るべし、ということらしいのだが、そんな時間も余裕もない。元々がかつて映画「月山」に感銘を受けたために月山に登りたいと訪れた程度だったので、出羽三山制覇は後日に回すことにした。

それに、その映画月山は、舞台は現代だけれど、修験の思想である即身成仏を感じさせるロマンチックでありながら一種異様な空気感を感じさせる作品で、神秘性と薄気味悪さが意識下の地下水脈に流し込まれるため、どうもどっぷりと堪能するのは気が進まなかったのだ。だから月山のみ。
さて、場内散策の後で選んだのが自由にのびのびと使える広大なフリーサイト。テント専用サイトだが、設営撤収時には車を乗り入れることができる。サイトからは目の高さに西の石見堂岳や鍋森などが見渡せる。月山が見えればいいのだけれど、フリーサイトからは北方面の眺望は森に遮られて見えなかった。

その夜、小雨が降り、翌朝は晴天を予感させるように盛んに山肌を霞が立ち上っている。
この朝、六十里越古道で湯殿山のピストンも一瞬ではあったが試みようと思ったのだけれど、温泉の誘惑には打ち勝てず、目の前の山肌から立ち上る雲気を眺めながらコーヒーを楽しみ撤収。朝湯を楽しんだ後、下道でのんびりと次のキャンプ地である新潟方面へと向かった。
ここは穴場というわけではないけれど、夏休み期間中の8月に独占できたことはうれしい限り。古道が通っている以外に、エリアは広大でキャンプ地区のほか、スポーツ施設区、植物園区に分かれている。植物園区には植物園やハーブ園のほか巨大迷路などもあり、ファミリーで連泊してもきっと充実して過ごせることは間違いない。ただし開設期間は6月~10月と短い。
【キャンプ場データ】
月山・弓張平オートキャンプ場http://yumiharidaira.net/6月1日~10月30日
山形県西村山郡西川町志津172−3
0237-75-2003
・入場料:大人500円(小学生~高校生250円)小学生未満は無料
・フリーサイト:3000円/オートサイト:4000円
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有るんですよねこう言うスポッと抜けたように貸切状態になる時期とサイトが。すごく得した気分になったでしょうね。ワンちゃんキュートですねえ。
20年ほど前にこのキャンプ場の近くの弓張公園でサファリで野宿しようと夜到着。何だか芝のいいポイントが有ると止めて車内宴会をしていると、窓を叩く人が。
「あのーここ我が家の庭なんですがあ...」平謝りで飛び出した思い出があります^^;
古道はとても素敵なルートだったと記憶してます。湯殿から朝日岳西側を回って林道巡りしながら野宿しました。
妻の実家が山形なので、また訪れたい所です。