fc2ブログ
CALENDAR
04月 « 2023年05月 » 06月
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
PROFILE
Zetterlund
Author: Zetterlund
クラブネイチャー管理人です。犬を連れ、キャンプを愉しみながら、ハイキングやクライミング、沢登りを楽しんでいます。仕事はコピーライター、プランナー、PR。
都内から房総に移住し、4年後に山恋しくて今は丹沢の山並み見える神奈川にUターン。
山と音楽と本があればシアワセ。

メールは下記まで
info.clubnature#gmail.com
(メールの際は#を@に入れ替え)

【好きな山】
甲斐駒ケ岳、秋田駒ヶ岳、水晶岳、北岳、烏帽子岳(乳頭山)、丹沢山

【好きな曲/アーティスト】
・マーラー/ベートーベン
・チャイコフスキー
・ラフマニノフ
・アンネ ゾフィー・ムター
・松田聖子
・ジョニー ウィンター/プリンス
・ウラディーミル・アシュケナージ
・アンドラーシュ・シフ
・フジコ ヘミング
・バレンボイム


このサイトはリンクフリーです。
記事、写真などコンテンツを引用する際は、出典元として当Blogのクレジット表記をよろしくお願いします。
・相互リンクはしていません

・The Anglican Communion(N.S.K.K)
◆穴場キャンプ場一覧◆
◆キャンプ場Best 7◆
◆お気に入り記事リンク◆
タグリスト TOP20
カテゴリ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
クラブネイチャーは、山とシンプルキャンプスタイルのためのアウトドアBlog

稜線のテント場にて

怪談CLUB 第十七話



それは、未明のできごとだった。

テントの外でガラリ、と石の音が聞こえた。
その音で目が覚めた。

石の音を立てるというのは、野生動物ではない。人間だ。ボクはテントの中で、じっと耳をそばだて、息を殺して何かの気配を探った。動くとシュラフのサラサラという音が外の何かに気取られそうで、じっと息を殺したまま、しょぼしょぼする目をしばたいた。

月齢15に近いこの夜は、高気圧の影響で雲一つない空のはず。きっと満天の星の上には、銀色の月が輝いているのだろう。テントの中はかなり明るかった。

しばらくしても、いっこうに何の気配もなく、いい加減「気のせいかな・・・」そう思った時だった。


耳元で、本当に耳に唇がつくほどの距離感覚で「ちがうのよぉ・・・」という明瞭な女の声。嘆願するような、喉の奥から絞り出す震えるような声だった。

その瞬間、ざわざわと全身が総毛だった。頭髪さえザワリと総毛立っていた。鳥肌立つという経験は山をやっていて何度も経験したけれど、頭髪が逆立つような感覚はは初めてだった。ぷつぷつという毛穴の感覚は、やがてチリチリと変化し、いつまでたっても収まらなかった。やがて全身に冷たい微弱電流が流れるような体感となった。

(どうしたんだ・・・)

気持ち的には、単なる幻聴のような、おかしな体験だ、としか認識していないのに、身体が異様に反応してしまい、激しく総毛だったまま、まるで収まらなかった。

(今の声は、幻聴?)

それにしては、いやに生々しすぎた。プツプツと鳥肌立つ全身の毛孔という毛穴を意識しながら、耳元には、リアルな唇を開く音と吐息が生々しく残り、暗闇から発せられて暗闇に消えて行った意味不明の「違うのよ」という絞り出すような声が繰り返し繰り返し、リフレインされ続けた。

(やばい、やばい・・・これはやばい・・・)

という思いが頭の中で渦巻いた。そして根拠もなく、このまま生きてはいられないかもしれない、という恐怖心が嘘のように去来しては波のように去ってゆく。その感覚に

(やばい・・・・やばい・・・)

という思いがさらに大きくなり、乾いた唇を舐め、唾を飲むたびに、シュラフがかすかにサラサラと音を立てた。

頭髪のゾクゾクと総毛立つ感覚も生まれて初めて経験するほどの強烈さで、髪の毛の一本一本がメデューサのように、ヘビになって暗闇にうごめいているのではないかとすら思えるほどの違和感だった。そして、いつしか身体が急激に冷えてきているのに、じっとりと汗ばんでいた。

(ちがうのよぉ・・・ちがうのよぉ・・・)

頭の中では、最前聞こえた女の声が何度も繰り返す。これを打ち消すように

(やばいよ・・・やばい・・・やばい)

と強引に脳内で繰り返した。何かを心の中で唱えていないとどうにかなってしまいそうだった。こんなことをどれほどやっていたものか。ある瞬間、カラカラ・・・という小石の音が遠くで聞こえた。

それに続いて「しゃっっ」という、鋭い声がした。発音的に「Yシャツ」の「シャ」の音を、声を出さずに、息だけで鋭く発したような、そんな音だった。

すると、遠くの方で、何かが弾けるような“パーン”という乾いた音がかすかに響いた。それはまるで、冬山で、樹木内部の水分が凍って膨張し破裂する時に出る乾いた音「凍裂音」そっくりだった。

その刹那、頭髪から全身を覆っていた鳥肌が、嘘のようにスッと消えた。たとえれば、頭の先から足まですっぽりとかぶされていたチクチク、ムズムズする布を、パッといっきにはぎ取られ解放された、としか形容できなかった。それほど劇的な変化だった。

ボクはシュラフから口を出して、大きく呼吸をした。この時、今まで呼吸もごく浅くしかしていなかったことに気づいた。しかし、声を出す気持ちにはならず、頭の中で

(なんだよ)

とつぶやいた。

この後、しばらく起きていたけれど、いつの間にか寝てしまったようで、次に目覚めた時には、空が白みはじめていた。ボクはテントを出ると、橙色に染まり始めた、これから向かう山々の稜線を眺めた。そして、どこか重い気分を残したまま、紅茶とビスケットだけの朝食を簡単に済ませると、次のテント場を目指して縦走を続けた。

この山行では、この後、別段取り立てて変わった出来事は起こらなかった。大学時代の個人山行中の出来事だ。もう20年以上にもなるが、今でもあの女の言葉、吐息は、鮮明に焼き付いている。

【山の怪談 関連リンク】

・S岳避難小屋で聞いた叫び声
・キスリングを背負ったトンネル内の黄色い人影
・山中の白い顔
・奥秩父の幻の大滝で、友人に憑いた正体不明の何か。
・徳本峠に坐す、見えない修験者
・霊に呼ばれた、二人の男。
・ヤマビル 湿地に蠢(うごめ)く恐怖
・丹沢の林道で幽霊を轢いた話


にほんブログ村 アウトドアブログへ
にほんブログ村


関連記事

テーマ:登山 - ジャンル:趣味・実用

                                               
現在の閲覧者数
カウンター(2008.9.26~)
タイアップバナー
どんぐりProject
「ドングリとアウトドア」記事でアピールした“どんぐりプロジェクト”に協賛いただける会社です。今後、少しずつでも活動を推進してゆきたいです。参加企業・団体、継続募集中!

Green Plus

検索フォーム
これがオススメ!

Esbit(エスビット) 585mlクックセット

ずいぶん昔、同じようなコンセプトの「メタクッカー」というものがありましたが、それと同様のもの。四角いエスビットポケットストーブより若干便利に楽しく使えます。これとは別に携帯の風防を持参すると効率よく湯沸しできると思います。とにかくハイキングやソロ山行をより楽しくしてくれる道具です。


Lixada バーベキューコンロ・焚火台 焚き火台 折りたたみ式 軽量
どこにでも持ち運べる、超お手軽な焚き火台がこれ。調理もできるしBBQにも使える。折りたためばサブザックにポンと放り込めます。もちろんキャンプの際のサブ焚き火台に最適です。


折りたたみ式ファイアースタンド 焚火台 簡単組立 交換用メッシュシート+1枚付
ボクも愛用しています!めちゃちゃ安いうえに、驚くほど軽くコンパクトに収納できるのでオートキャンプはもちろん、ザックのサイドにくくってトレッキングキャンプにも重宝します。メッシュなので燃焼効率も抜群でよく燃えます。キャンプでのメイン焚き火台としても十分です!おすすめです。


ファイントラック(finetrack) フラッドラッシュスキンメッシュT MEN'S FUM0402

昨年この存在を知って愛用。素肌感覚のベースレイヤーで、汗を放出し濡れ戻りなし、という画期的ウェア。これの上にインナー、あるいはアウターとしてのミッドレイヤーを着ます。冬の登山で濡れによる冷えを防止できるほか、夏場でも多発する低体温症などのリスクを軽減し、非常に快適な登山や沢登りを実現。このドライな快適さは一度体験したら手放せなくなるはず。おすすめ!
おすすめストーブ「プチかまど」
◆プチかまど◆
『GARAGE PICKUPCAMPER』誕生!! ClubNatureでも愛用しています。

プチかまどサイトへ
リンク
チームマイナス6%
ClubNatureはチームマイナス6%に参加しています

ブロとも申請フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード
QRコード
サイトマップ
blogranking.net
RSSリンクの表示