
八幡平NATURE TRAIL東北の代表的なアスピーテ(楯状火山)帯が八幡平。そこには、アスピーテ特有の広々とした大地に隆起したピーク周辺に実に美しい湿原が数多く点在する。出かけたのは9月24日。
アウトドア雑誌で頻繁に取り上げられるバックパッキングルートに、ジョンミューア・トレイルなるものがある。しかし、それらアウトドア系スタイルマガジンで取り上げられる場所に負けない多くのトレイルが日本には存在する。そのひとつが「
ジョン・ミューアトレイルよりも北アルプス・トレイル」というような過去記事にした北アルプスのルートだったりする。
もちろん雁ヶ腹摺山周辺や奥秩父エリア、はたまた南アルプスエリアやら奥日光そして奥羽山脈擁する東北方面にだって素晴らしい数々のトレイルがある。それらをゆっくりと味わうようにして巡り歩けば、それだけで人生がふくよかな豊穣に満たされるに違いない。
アルパインクライミングにどっぷりとのめり込んでいた時期もあったけれど、どうもこの頃ではこうした遥かな雲上の道を、風景を肴に歩いて楽しむ悦楽に心動かされて仕方ない。
この“雲上トレイル”で好きなもののひとつが稜線に広がる高層湿原だ。水面に写る青空が山渡る風の波紋に搖れるその光景は、まさに天上の庭園。見る者から時間を奪い去ってしまうほど魅力的なものだ。
この稜線の湿原で代表的なのが苗場山。早朝の苗場山稜線は実に美しい。二年前に満喫した秋田の乳頭山の千沼ヶ原も大好きな稜線湿原のひとつ。こうした高層湿原に、これまた大好きでたまらない高原台地である美ヶ原を組み合わせた、まさにゴールデンコンビとも形容できる贅沢な場所が東北地方にある。それが八幡平。つまりオイシイとこどりしたドリーム・トレイルだ。

八幡平・見返り峠からの眺めかなり行程は短い。茶臼山の登山口から茶臼山を経由して、アップダウンの少ない稜線をのんびり歩き2時間半ほどで八幡平バス停に到達してしまう。おまけに、八幡平頂上駐車場からだと、1時間半で湿原が点在する八幡平の頂上をぐるりと周遊できてしまう。

稜線の湿原とその先の沼だから、ランチを組み込んで、稜線と湿原と沼の織り成す絶景を愛でながら撮影したりスケッチしたり。ゆっくりとランチやティータイムを楽しんだり。時間をたっぷりとかけて没頭することができる。

八幡平に遊んだこの日は9月24日。外気温は3度と冷え込み風も強い。
水面から立ち上る湯気が風に舞う。おまけに、火口に水をたたえる八幡沼を望むようにアルペンムードたっぷりの山小屋が建っている。これは陵雲荘という避難小屋でとても美しい。内部には清潔なハイカーズベッドに暖炉まであって、まるで別荘のような小屋。ここに寝泊まりして思う存分八幡平を楽しむのもいいかもしれない。

避難小屋「陵雲荘」のテラスからの眺め(左)
八幡沼とその左側に建つ陵雲荘の別荘のような佇まい(右)八幡平のトレイルにはNATURE TRAILという名称が付けられていて、空が近い稜線と亜高山帯特有の甘く香ばしい匂いに満ちたオオシラビソの森を交互に楽しむことができる。

オオシラビソは一般的にとても背が高く樹幹も大きいのだが、八幡平の個体は北アルプス・栂池平の立派なオオシラビソとまったく異なり、ひどく背が小さく貧弱だった。その理由は冬、すさまじい風雪によって樹冠は成長できず、雪に埋没した部分のみ少しずつ成長するからだと説明に書かれていた。
オオシラビソの森の中につけられたトレイルを歩きながら、どんな環境でも懸命に生き抜こうとするその姿に感銘すら感じてしまう。たとえガスっていて景色が楽しめなくとも、この貴重なオオシラビソ(青森とどまつ)樹林を体験できるだけでも価値がある。
日帰りはもちろん、避難小屋に宿泊してまったりと楽しめるのが、この八幡平NATURE TRAILの魅力だと思う。再訪はまた、来年。積雪残る春の頃か、はたまた盛夏になるのか。今回とはまた違った顔を楽しんでみたい。
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クライミングをやっていたときは尾瀬・白馬など岩のない山には見向きもしなかったのですが、今は高層湿原や丸~い緑の稜線に魅かれます。
八幡平は冬しか行ったことがないので、行ってみたいですね。