
撮影:いのうえさん今年、2010年のゴールデンウィークは雪の前穂北尾根~奥穂~西穂を周遊し、途中で槍に向かうという仲間と別れて西穂ロープウェイで降りた下界で、数年来Blogで交流をさせていただいてきた山仲間との邂逅をとうとう果たすことができた。「
その男藪漕ぎ中」というBlogを主宰している“いまるぷ”さんだった。
※メンバーのブログリンクは最下段
できれば、夏が終わる前に、どこか気持ちのいい場所をたわいもない話に笑いながら歩きたい。
猛暑厳しい今年の夏。涼しく快適に、静かに楽しくそれでいてハイキングとは違った山らしいワクワク感が楽しめるプチ山旅・・・ということでチョイスしたのが奥飛騨の高原川・沢上谷(そうれだに)。乗鞍岳を源流とし奥飛騨温泉郷平湯、そして平家の末裔と言われる福地の集落を抜けて栃尾で蒲田川と合流する清流に、神岡の西で注ぐ美しき支流だ。
時期は・・・夏がフィナーレを迎える前の、焼くような陽射しに一抹の寂しさが交じる9月初旬。5人の素敵なアウトドア仲間と夏のかけらを味わいながら、他愛もない話に笑いながら、しみじみと数時間ばかりの山旅を楽しむという企画が実現した。
入渓地点は関東から見て上高地のはるか先。平湯から飛騨高山に向かい、神岡を過ぎて左の高原川を渡り上宝村古橋集落の先の山の中。
当日の3時半ちょっと前に外房を出発し7時45分に現地でjinさんと合流。自宅から一度も休憩なしだったので、ここでサンドイッチで腹ごしらえし散歩しているところに、
いまるぷさん、aneさん、
鳥さん、
いのうえさんも到着。みなさん楽しそうに沢支度を済ませ、準備運動の後にのんびりと沢へ。

沢上谷(そうれだに)は高低差がさほどなく、水平距離も短い。最初から最後まで、そのほとんどを一枚岩の上を音もなく清流が舐めるように流れる“ナメ”が占めている。つまり登らず、ヒタヒタと歩く沢。
黒部や谷川と違って、水はさほど冷たくはない。おまけにナメの合間々々に落差の低い滝が次々と出てくるので透明な淵に飛び込んで小滝を越える、越える、越える。その上のナメは、一見すると水が見えず、なめらかな一枚岩だけれど、足を置くと透明な飛沫がキラキラと陽光にきらめく。ボクはうれしくなって、思わず寝転んでしまった。

この上が五郎七郎の滝左側の10mほどの滝の上には五郎七郎の滝がかかるが、ここはパス。滝の左右を登ってもいいし、左の草付きには小道(巻き道の踏み跡)まであるので、そこから難なく上がれる。しかし、あまりにもったいなくて、画龍点晴ではないけれど、一箇所未到達場所を作っておきたかった。こうすることで再訪する積極的な理由を残しておきたかった。もしも都合がつけば、紅葉の時期に一泊で再訪したいと思っている。

岩洞滝(撮影:いのうえさん)次の左側からの支流を行けば、そこに出会うのは岩洞滝と呼ばれる25mの直瀑。半円の岩壁に囲まれたその場所は、まさに小さな秘境と言ってもいいほど。滝の下には剥がれ落ちた岩が堆積し、やはり今後も少しづつ少しづつ落口の後退は進むのだろう。辺りにはヒヤリとした大気に緑の濃い匂いがむんと満ちている。

向こうに見えるのが簑谷大滝再び本流に戻り、上流へと遡行を再開。沢は斜度を増し、累々と続くゴロゴロの岩の重なりを次々と越え、両側が衛兵のような大岩で狭まった場所に至ると、グレーの虚空を白い帯が染めた。なんだ・・と思わず凝視すると、それは巨大な一枚岩の岸壁を音すら立てずに流れる巨大な箕谷大滝だった。

箕谷大谷でくつろぐ(撮影:いのうえさん)こんな滝、はじめてだった。ボクらは滝の横に回り込み、日当たりのいい場所に陣取ってしばしの休憩。猛暑の下界をよそに、ポカポカと夏の陽射しがほんとうに気持よかった。滝特有の風も無く、音も無く。セミの鳴き声の中、ボクら6人の談笑する声が聞こえている。
さすがにこれは登れないし、ボルト連打で登る無粋な真似もしたくない。見れば右側の潅木地帯の斜面に高巻きの踏み跡があった。潅木を頼りに登ると踏み跡があちこちに分岐しながらどんどん高度を上げる。とにかくどこを登ろが、岸壁に突き当たる最上部まで登り、そこから右へと伸びる踏み跡通りにちょっと登ると目の前に広々まっ平らな仕事道が出現する。
その仕事道の途中で、沢音がする左側にロープがあった。かなりの急傾斜に下ろされたトラロープは滑るし、フィックスされたザイルも劣化している。下り始めてすぐに思ったのは、懸垂下降のほうが楽だし安全だということだった。下降距離は丹沢の広沢寺の岩場より遥かに長い。少なくとも40mの1ピッチ以上あったので推定60m以上はあったはず。

降りた場所は箕谷大滝の落口真上のナメ。すぐ横を音もなく水が落ちている。下を見てみたくもあったけれど、ビレイ無しではとてもじゃないが怖くて覗けない。
小休止しナメを味わいながら歩き出すと、すぐ上のコーナーを曲がったとたん、なんとものすごく広く長いナメがまぶしく輝いていた。もうヒャッホーと叫びたくなってしまうほどの開放感。奥秩父のナメラ沢、東のナメ沢やヌク沢などとはまた違った、カラッと気持ちイイ最高のナメ。

延々と続く夢のようなナメここから最後まで、もうナメナメナメ・・・“またナメなのぉ?”なんて神仏を恐れぬ発言が思わず口をついて出そうになるほどナメのオンパレード。ここだけ見ればものすごく美しいのだけれど、あまりにも連続するものだから麻痺してくるのだ。同じように、美女に囲まれた暮らしをしていると、美女に飽きてしまうのだろうか。
とにかく簑沢大滝の上流は、遡行終了地点まで延々と個性的で美しいナメが連続する。ナメの所々には、自然に作られたバスタブのような窪みに青々と透明な水が揺れている。そこには魚が棲息しているようで、上流からモリで魚を突きながら下ってくる男に出会った。
沢の眼前が開け、傾斜がほとんどなくなると、目の前に小さな橋が掛かる。そこから林道へあがると白く誇りっぽい砂利道。ボクら6人は、蝉しぐれのなか容赦なくジリジリと照る夏日に目を細め「お疲れさま~」と皆いい笑顔だった。遡行終了地点から車まで、40分ほどだったか。道の途中から眼下に今たどってきた谷と滝が見事に眺められた。とにかく、これまで経験してきたのとは別次元の、最高に楽しくて気持ちいい沢だった。

【参加メンバー】
・いまるぷさん
その男、薮漕ぎ中。・いのうえさん
新・放置民が行く ひとりでできるモン!・鳥さん
英語ができないのに、アウトドアグッズ海外通販。・aneさん
世界ぶらぶら姉妹旅・Jin_bravoさん
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ナメがいくら続いても飽きるようなことは無く、
ひとつひとつのナメも釜も愛でながら過ごすことができました。
が、何よりもご一緒に水遊びの一日を過ごせたことが
較べることのできないよろこびでありましたこと、
ありがたく言葉にできぬ思いで御礼申します。
次は松高ルンゼでよろしくお願いいたします。