
別の記事として以前アップしたのだが、ボクがまだ16歳の頃。夏休み中の8月中旬。同じ高校山岳部の友人と二人で南アルプスを縦走するため北岳に登ったときのこと。
経験の浅かったボクらは、ちょうど近づいてきていた寒冷前線の存在を過小評価するという判断ミスを犯ししてまった。広河原から北岳の肩のテント場に向かう行程半ばで風雨が激しさを増し、横殴りの雨が小石の礫のような痛さで顔に当たる。さらには息もできないほどの暴風となり、とうとう稜線に出た瞬間に40キロ近くの荷を背負った体がふわりと浮かんで、あわや飛ばされそうになってしまった。風速は40メートルを超えていた。
息ができないばかりか立って歩くことすらできず、這うように耐風姿勢をとり、暴風の合間合間で歩き、途中でとうとうビバークを余儀なくされた。激しい風雨は夜半まで続き、ボクらは一睡もできずに絶えずテントを内側から支えたり、頻繁に張り綱を補強したりするため、雨具を着たままシュラフに入っていた。
テントの中は水没状態で、床に水がたまっている中にぐしゃぐしゃに湿ったシュラフがある、という状況。その暴風雨は夜半に収まり、今度は想像を絶する寒さが襲ってきた。ヘッドランプの光の中、吐く息が真っ白になり、次第にテント内が霧氷でキラキラし始めた。ボクらはあわててタオルでテント内の水を何度も吸い出し拭きあげると、着衣を乾いたものに着替え、ビニールのゴミ袋に足を入れ乾いた新聞紙を胴に巻いてから再び雨具を身につけて濡れたシュラフカバーとともにシュラフに入り寒さに備えた。
その間にも気温はどんどん下がり、ついには濡れた部分が氷結してしまった。そして、どうにもこうにも耐えきれず、ついに午前4時前に行動開始するためテントから出ると、ヘッドランプの光に周囲がキラキラと光った。8月という真夏に出会った、氷と霜柱が一面を埋め尽くす夢のような光景だった。これ以降、天気図には臆病なほど敏感になってしまった。これは夏山の寒冷前線通過。
そして今回は冬山の冬型気圧配置と寒波の通過。たしか2007年の正月も最強の寒波襲来、というようなニュースが流れたと記憶している。ボクがまだ青山の広告会社に在籍していた頃の話だ。で、今年は早々の11月1日に“この冬最強の”という形容詞をともなう寒波の第一波がやってきた。昨年よりおよそ2週間も早い。これに引き続いて先週12月16日には、またまた“最強の”という形容で寒波接近の気象情報が流れた。

12月16日時点での観測によると上空5000メートル付近の気温は-33℃前後。翌日17日の夜には-36℃前後、そして18日(金)の夜には-40℃前後に低下すると予想されていた。一般的に上空5000メートル付近で-30℃以下だと平地では雪。-36℃以下になると平地では大雪。さらに-40℃以下だと警報級の大雪の恐れとされている。
これは雪中キャンプに最高の気象条件とばかり、立て混んだ仕事も忘れパッキングを開始。平地でも大雪のこの状態だと山岳では大荒れになるという予想と、年末に富士山へは雪上訓練で入ることになっていたので、できればソロでのんびりと楽しめる森林限界を超えない穏やかな雪山をめざして、東北の福島と新潟国境エリアの普段は登山道が無く藪で入り込めない山域へ。

装備は・・・kiva(キヴァ)という三角のシェルターテント& HEX3のバスタブ状のフロアとmoss(モス)テントを持参し、気分で使い分ける計画をたてた。足はワカンではなく、雪遊びにうってつけのスノーシュー。そして居住エリアを作る際に不可欠なスノースコップと雪中キャンプ(登山の幕営)用のスノーペグ、ダンボール、新聞も持参。当初から森林限界を出るつもりはなかったのでアイゼンやピッケルは不要。そのかわりにスキーストックを二本装備。


これが超軽量空き缶ストーブと黒風防セット雪遊びが目的なので火器もプリムスのEtaExpressをメインに、T’sStoveの超軽量・ゴトク付き空き缶ストーブ「ショーティ」と放置系グッズの「黒風防」のハイブリッドシステムとガレージピックアップキャンパーの「プチかまど」とトランギアストーブの、焚き火だってできちゃうマルチパーパスシステム。

こちらが、アタッチメントでトランギアの風防にもなる
ハイブリッドな焚き火台・プチかまど今回は、どうしてもあることをしたかった。そのあることとは、雪の深い森の中で焚き火をすることだった。だから風雪の中、三角シェルターにタープで前室を設えそこに雪を切り出してキッチンまで作ってみたのだ。しかし残念ながら薪が調達できず、計画はあえなく断念。カップラーメンの後にウォッカを口にしてしまったため、何も楽しむ間もなく夢の世界に轟沈してしまった。

翌日は尾根伝いにさらに谷筋へ。そこでダブルウォールのmossでネグラを設置。誰ひとりいない雪の森を静かに堪能しました。さて、年末は富士山です。
※デジカメは寒さで不能になってしまったため、すべての画像は身につけていたiPhoneで撮影。
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・富士の山、夏の雪降る蝉時雨・寒冷前線通過時に出会った、お隣のビバークな人
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高校の時12月に金峰に行ってツエルトでビバーク、そのころ羽毛など持ってなくて化繊シュラフの2枚重ねでも寒さと強風で一睡も出来ず翌日帰ってきたことがありました。今では笑い話ですけどね。
年末富士山ですか、こりゃまたすごいところへ行きますね~。富士山の爆風と寒さは半端じゃないですからね~、気をつけて行ってきてください。
私はすぐ近くでダイヤモンド冨士を見る予定です。