
夏へと馳せる思い登山をしていれば、きっと誰にでも心に残る山小屋というものが存在するだろうと思う。ボクの場合どうも信州に集中していて、その理由を尋ねると少年時代の春休み夏休み冬休みを信州の山々を登って過ごしていたからだとわかった。
もちろん今までに北アルプス以外の山域に出かけているけれど、中学高校の少年時代に情熱を傾けた山々というものは、それ以降のものと較べると別格にも思える。そういえばマクドナルドなどが幼少時期の子供らにターゲットを絞るマーケティングをしているけれど、あれは幼少期に味わった味覚は生涯の嗜好をコントロールする、ということかららしい。であれば、幼少期に近い少年時代に経験した物事というものは、その後の趣味志向を左右してしまうのかもしれない。
まあ、そんな話はさておいて。たとえばボクにとって
マーラーの交響曲第五番の第四楽章アダージョは涙が出るほど美しい旋律で、もうこれ以上のものは存在しないだろうというほどの存在なのだけれど、その山小屋を脳裏に思い描いた際に、このアダージョが鳴り響くかどうか、というのがボクの目安だ。
山小屋に寝泊りすることはほとんどないけれど、休憩したり、テント場を利用したりは茶飯事で、
黒部五郎小屋などいくつかの小屋で「ここで過ごしたら気持ちいいだろうな・・・」とトキメキのような衝動を覚えたことがあった。そんなとき、モーツアルトのオーボエコンチェルトあるいはマーラーの交響曲第五番・第四楽章のアダージョなどが山を渡る風の中に聞こえたりする。

そのひとつが、
薬師沢小屋だ。これは海外の友人がアメリカにも薬師沢小屋みたいな山小屋があると送ってきてくれた画像。画像では両者は違って見えるけれど、実は、一度でも薬師沢小屋に身をおくと、心象風景としては差異が全く無いということが実感できる。薬師沢小屋はこんなイメージで確かに
心の目には写っている。
ここは以前の記事「
山旅キャンプ-2 黒部源流へバックパッキング」で意識した小屋で、通過するにはあまりにも気持ちがいいので、ここのテラスでコーヒーを飲んで眼下の黒部を存分に楽しんでから沢に下りて遡上を開始した。
ここに至るには
折立を基点とすればアプローチは短い。折立にも無料のキャンプ指定地があるけれど、そこは前夜発・明け方登山という場合に多くの登山者が利用していて、ここを目的にキャンプする物好きは少ない。
この折立からバックパッキングで
太郎平小屋を経由し木道を歩くと、岩場を下った場所が沢の渡渉地点。炎天下であればここで顔を洗ったり、休憩したくなってしまう場所。こうした渡渉をいくつか繰り返していると眼前に
水晶岳が観望できる絶好のヴューポイントに出会える。ボクはここからの眺望が大好きで、しばし水晶岳の姿態に見とれてしまう。
やがて樹林帯の岩場の下りに入る頃になると、木立のはるか下に赤い色がちらちらと見えはじめる。それが薬師沢小屋の屋根だ。ここの良さは、言葉や画像などでは半分も伝えきれない。画像で見るよりもはるかに高度感があり、テラスから眺める黒部の渓谷美の美しさといったら、笑ってしまうほど。
以前の記事の沢登りはここから沢に入り遡行を開始した。登攀要素もなく、
絵画の中を歩くような、そんな錯覚すら覚える幸せなルートだった。もちろん沢に入らなくとも、折立を早朝出れば、余裕で薬師沢小屋に到着できる。ここで一泊して翌日、早朝の黒部川本流を存分に楽しんだら、のんびりと折立に下山すればいい。
夏へと馳せる思いに真っ先に浮かんだ、北アルプス・薬師沢の山小屋は、のんびりと一泊二日で最高の山旅が楽しめることでしょう。
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地図はこちら◆
山旅キャンプ-2 黒部源流へバックパッキング◆
ジョン・ミューアトレイルよりも北アルプス・トレイル◆
雲ノ平 北ア・バックパッキングと沢旅の風景
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山登りはそこそこで、こんな気持ちいい山小屋の世界にヘリコで行かせて頂きたい。んで、美味い珈琲、酒、葉巻。何よりその場の空気を堪能したいのです。
こ~んな奴は、山に来る資格無し。私もそう思います^^; だから「沢山の方にこの素晴らしさを味わって頂きたい」って文句は僕は大っ嫌いです。