山は危険だ、と何度言われたことか。
落雷はもちろん、低体温症、脱水症状などの不調やら、落石、墜落、滑落まで。数え上げたらきりがない。先日、実家に帰ったおりに母親から『あなたが山岳部で山に行くたびに、ほんとうにいつもいつも心配していたんだから』と真顔で言われた。
そういえば・・・昔、
冬の五竜・不帰峰八方でZK高校の生徒が遭難したことがあったけれど、当時ボクも同じ山域に登り、激しい風雪のなか一夜を過ごしていて、数日後、下山して帰宅した際の母親の喜びようは今までにないものだった。携帯電話なんてものはなかった時代、僕は公衆電話からの下山報告を面倒がってしなかったのだ。
今回は、そんな数々の山の危険のひとつ、名づけて
密林の『地雷原』について。
数年前のちょうど今の時期。樹海を探索するため
富士山の馬返し登山口近くの樹林帯に踏み入れたことがある。するとあたり一面、養鶏場あるいは牛舎のような異様な匂いが立ち込めているのに気づいた。目を凝らして足元を見てみると・・!!!!
なんとトイレットペーパーと茶色が雪の中に見渡す限り・・・
野グソの跡だった。恐ろしいことにボクは『野グソの地雷原』の真っ只中にポツンと立っていたのだ。状況を理解できぬまま、コンバットというアメリカのTV番組の中でサンダース軍曹がナイフで地面をまさぐりながらホフク前進する姿を思い出し、目的の方向を確認すると、地雷に触れぬよう慎重に少しずつ、にじり歩くように前進し、気の遠くなるような時間をかけて地雷原の通過に成功した。
また、地雷原はこんな場所にもあった。
それは
丹沢。塔の岳の南尾根、二の塔から登山道を南下すれば富士見山荘に下山できる。しかし南西方面に斜面を回りこむようにして樹林帯の中を歩くと、そこには気持ちのいい景観が待っているため、ボクは好んで道ではない場所を歩いていた。
あるとき、いつもよりだいぶ手前から南に向かって右手の樹林帯に足を踏み入れようとしたときのこと。樹林帯手前の草地に若い女性が立っている。彼女はボクを見ると頬を赤らめて、何やらソワソワ・・・“ふっ、俺って罪な男だぜ”なんて思いながら奥へ入ると・・・白い何かがあっちにもこっちにも・・・
もしやこれは・・・地雷原?!富士山麓の樹林帯での攻防戦を生きぬいたボクは、まさか!とめまいがした。しかしすでにサンダース軍曹を体験していたため、地雷原の真っ只中に入らぬよう、状況判断のために用心深く見回した。すると・・・すぐ手前の木の根元に大きな桃のような何かが暗い低層樹林の中に神々しく輝いているのだ。
「あっ」とボクは声を飲み込んだ。それは・・・・
女性のお尻だったのだ(^^;;
釘付けにされてしまったボクの視線。その先には桃。女性はしばらくすると立ち上がり、パンツをたくしあげる。視線を逸らすことができず棒立ちになったままのボクは彼女と目があってしまった。ロングヘアーを顔の横で束ねたかなり美しい女性だった。彼女はボクと目があった瞬間、
ムンクの叫びのように大きく目を見開き声も無く硬直した。
しばらくして我に返った彼女は、まるでデパートの開店時にスタッフが入口でお辞儀をするように、ものすごく丁寧にお辞儀をした。それにつられてボクもお辞儀をしてしまった。恐怖の地雷原の真っ只中に流れる、相手を認め合ったもの同士だけが醸しだすことを許される気高い空気感・・・なんてワケはなくて、ものすごく気まずい空気・・・
彼女は少しずつ移動し始めた。移動しながらも、ペコリ、ペコリと頭を下げている。そしておもむろに小走りして樹林の外に向かって走り出す彼女。ボクはその背中に「
いや、違うんです・・・」とわけのわからぬ声をかけてしまった。
あ~~ちくしょうめ。
別にボクは覗きでも何でもない。藪歩きしていたら、その先に今まさに地雷原の設置を終えようとしていた女性兵士がいた、というだけの話だ。むしろ危なかったのはボクのほうではないか。そうだ、ボクはサンダース軍曹なんだ。斥候(せっこう)を成功させたのだ。
そもそも樹林の手前で立っていたのは彼女の友人だろうに。哨戒中の女兵士なのに、敵の斥候(スパイ)との遭遇にあんなにもうろたえるとは、何事か。命をかけて、地雷原設置をしている部隊に危険を知らせねばだめだろう。あるいは、このサンダースを足止めするために一戦交えるくらいの気概はなかったものか。
とにかく、このようにして、山中には地雷が今日も設置され続けている。面白いことに、人は同じような行動をとるようで、同じような場所に地雷が集中し、ついには危険な地雷原ができあがるようだ。八ヶ岳などにもこうした地雷原があったが、それは割愛(^^;;
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恐怖の地雷源。夢に出そう!!!(^^);;
コンバットのテーマ音楽流れてきそうですよ。
逃げる桃の持ち主と、地雷源で立ち尽くすユウさん。
「いや、違うんです・・・」は、なんだか悔しいですね。(^^);;