3Kとは『
きつい、汚い、危険』のことで、この要素が全て揃ってしまう仕事には若者が見向きもしなくなる傾向はいつからなのだろう。
一般的にガテンな仕事全般(ブルーカラー)を指すと思われているが、それは幻想かもしれない。きつい・・・これは、何も肉体労働でなくても、仕事全般に言えること。
広告業界や
デザイン業界なども少し前まではほとんど家に帰れず、徹夜の連続なんてことがあたりまえ。特にイベントや映像なんて仕事では夜寝ることはあきらめたほうがいいかもしれないし、ボクが知っている多くのプロダクションのグラフィックデザイナーは、ほんとうにフラフラになって仕事に取り組んでいる。
また、近頃叩かれっぱなしの
公務員たちも実によく働いている。社保庁の年金問題の対応で、一般職員の心労は計り知れないだろうに。そして最たるものは
医師。心身ともにボロボロになっているのに、さらに鞭打ってがんばっている。数ヶ月前、千葉の
福島孝徳記念クリニックの仕事で福島先生と対面したが、寝る時間さえ惜しみ、まさに命を削って働くさまは痛ましくもあった。こうして世間を眺めてみれば、いったいどこに“きつくない仕事”なんてあるのか。
そして、汚い・・・これも同様で、家に帰れず会社に泊まりこむデザイナーらは、夏場だとけっこう臭うし中には数日間同じものを着たまま無精ひげを生やし机にかじりいているスタッフさえいる。ボクが映像の仕上げで連日徹夜をしていて、夜中にタクシーで
霞ヶ関を通りかかった時、午前三時だというのにオフィスにはまだ明々と灯りがともっていた。新製品開発する
メーカーのスタッフたちも、夜な夜な会議の連続で風呂にもろくすぽ入れていない、というケースも知っている。知人のDCブランドを身につける
建築家たちも現場に入ればコンクリートの粉塵やほこりまみれになって図面と格闘している。こうして見てみれば、ボクの知っている仕事で“きつくない、汚くない仕事”などほとんどない。
そして3K最後の
危険・・・これだけは、たぶん免れている。こういう3Kだけれど、要素としてみてみれば、多くの仕事がカタチを変えて同様のものを持っている。それでも3Kだからとブルーカラーが避けられるのは、カッコイイとかカッコワルイとかいう、たんなるイメージからではないのか。
前置きが長くなってしまったけれど・・・この
3Kが当てはまるのが登山行為かもしれない。高校・大学の山岳部では部員が全く集まらず、部が立ち行かなくなり廃部となる学校が増えているという話を数年前に聞いた。確かに山岳部は訓練はきついし、山岳遭難、事故に加えて一時期はシゴキによる死亡事故もあったりで、イメージは良くないかもしれない。それに、本番のクライミング自体は人に見られる競技ではなく、ひたすら自分と向き合う行為だからスポーツとは呼べないだろうし、ハデさとは無縁だ。
日常的な訓練も、10キロ程度のランニングや各種筋力トレーニング、30キロ程度の石を背負って校舎の階段を何度も上り下りする歩荷(ボッカ)訓練などかなり地味なもの。これに加えてクライミング時には命の危険もあるし、風呂などは入らないので汚くもある(^^;;
実に
3Kではないか。若者の間で山岳部人気はすでに下降の底無しのようで、登山者の多くは40代以上のシニア世代。かつての登山ブームの後追い世代だ。今の若者たちが仕事も趣味も「3K」を嫌ってくれたおかげで、山はさながら“
お達者クラブ”と化している。この世代をピークにどんどん登山人口が減り、やがて山は再びもとの静けさを取り戻すのだろう。いいことだ。
そして、いつの日か、山は本当に山を愛する一部の好事家たちのものになるだろう。無残にエグれた登山道や広がる踏み後の傷も、長い年月をかけて癒されるに違いない。しかし、趣味や仕事も、3Kと言われる世界に踏み込んでみれば、実は外見のイメージではわからなかったような官能とか喜びがあるのに・・・これを知らずに人生を過ごすなんて、実にもったいない。
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「百名山」は別にキライではないが「百名山信奉者」はキライなワタシです。そっち系のカリスマ・岩崎氏も別にどうとは思わんが、こう書くヒトもいます。
http://www.geocities.jp/chonai_yama/essay/100s.html
20年以上も登山の世界から離れている間に、いろんなコト(ジジババだらけ、バックパックの進化、2本ストック、山小屋の充実、交通インフラの整備などなど)が、ずいぶんサマがわりしていたのが面白かったですね。
「深田百名山」については間もなく記事に書きますが、アレって「信仰上の歴史・由緒」が選定の3基準のひとつってトコが、ジジババたちのハートをワシづかみするんだそうです。