
(クリックで画像拡大)
北アの雲ノ平周辺は
スイス庭園など諸々に命名されているように、自然の不思議な力によって生み出された、まさに庭園。天上の
楽園です。※
写真は黒部源流部の清冽な沢水雲ノ平から見て、東の野口五郎岳は僕の大好きな山。そして南西にあるのが黒部五郎。
この
五郎というのは、おそらく
雷のことでしょう。夏場だとほんとうにあっという間に雲が湧きだし、ゴロゴロ・・・となります。こうした雨の多さも、豊かで美しい自然環境に一役買っているのでしょう。
薬師沢の小屋は黒部の深い渓谷を見下ろす岩の上に立てられた、ちっぽけな古びた山小屋です。地点リンクは下です。国土地理院の地形図にリンクします。
■
地形図リンクこの薬師沢小屋がある場所は、登山黎明期まで秘境中の秘境とされてきた場所で、現在の上高地の代表的な山小屋の先代あるいは先々代が山の民としてこのあたりを跋扈していた時代に、
数々の不思議・怪異が記録されています・・・
それらの面白い物語は
黒部の山賊
という本にぎゅっと閉じ込められています。近年復刻されたのかされていないのか・・・僕はこの本をかなり前に、神田の古書店で手に入れて、今でも頻繁に読み返しています。山岳本では、
もっとも面白い部類に入る本だと思っています。
このルートを遡行しようと思い立ったのも、実のところ
黒部の山賊
の影響です。

(左)マップ1 (右)マップ2
マップ1にあるように、沢へは薬師沢小屋から渓谷の岩場にかけられた鉄階段の先から入ります。結構な水量があり、出だしをすぎたあたりに右岸(向かって左側)の岸壁の、ごうごうと流れる水流に向かって滑り落ちそうなほど傾斜した細い部分を突破する箇所がドキドキ感あります。
落ちたら確実に危険です。沢初心者であればザイルは欲しい場所。
さて、これを過ぎれば存分に黒部の美しい渓谷を堪能しながらの沢登りがたのしめます。楽しみは
赤木沢との出会い部分。僕はカメラをビニール袋に入れて、それをさらに大きなビニール袋に着替えやら一切合財とともに入れてしまっていたため、画像がありません。
※
赤木沢、で検索すれば素晴らしい画像の数々を見ることができるはずです。
沢を小さな滝を登りつつ、どんどんつめ上がります。
そして
途中でビバーク。増水時のエスケープルートを確保してからシュラフにシュラフカバーだけで適当な岩の上に寝転びます。
ビリー缶と呼ばれるコッヘルで焚き火をしながら炊飯し、食後はそのまま就寝。
※ビリー缶と言って「ああ、あれね」とわかる人って、たぶんほとんどいないかも・・・(^^;;
夜中に熊なのか何なのか・・・獣の気配が周囲をうろついて目を覚ましてしまったため、翌朝2時過ぎに起床し、ジャム入り紅茶を飲みながらホットケーキの朝食。いろいろ楽しいことをしながら空が白むのを待ち、4時過ぎに出発。
マップ2にある青い矢印は
当初の計画ルート。祖母沢を過ぎ、左から流れ込む祖父沢に入って、それを詰め上がって雲ノ平に登ろうという計画だったのですが、この沢はなぜだか
ヒルがやたらと多く、サイズもでかい。そのうえ異様に獣臭くて、ついに断念。
苦労して登ったのに・・・と思いつつふたたび戻り、そのまま黒部の源流部まで遡行して、祖父岳の南で沢から上がり、祖父岳をまたいで向こう側の雲ノ平へと至った・・・というわけです。
※この写真は沢を黒部源流部まで詰め上げた場所から、今来たルートを振り返って撮影したものです。しかし、そう簡単にお天道様に雲ノ平に入らせてもらえず。
源流部手前からゴロゴロという遠雷が聞こえていて「いっきに走って越えてしまおう」という計算でしたが、岩山を登りだしてしばらくすると・・・ドカン、ゴロゴロ、バシャーン!!と、山特有の雷雨。計算が狂ってしまいました。場所が岩山だけに、電流が四方八方に走るので、“祖父沢の往復さえなければ・・・”と悔やみつつ、低みを目指して駆け下りて草間の土の岩陰に身を潜めます。
途中の岩陰で、頭を抱えるように丸まって避難していた男性がいたので声をかけますが・・・雷鳴のために怒鳴っても声が届かず、彼の雨具をバシバシと叩いて促し低みへ避難。その直後に鼓膜が破れると思えるほどの落雷音が断続的に炸裂。たぶん上の岩場に何箇所が落ちたはずです。危機一髪・・・僕にとって、山で一番怖いのは落雷です。(ついでに、山で嫌いなのは、熊鈴やラジオをつけた登山者と団体です)
さて、二人で雷待ちをしながらトランギアのストーブでジャム入り紅茶を入れて彼にもふるまいました。雷が遠くなっても危険ですので、かれこれ一時間ほどは山の話でお互い盛り上がりました。
下は、黒部川の源流の写真です。左の沢筋をさらに詰め上げて登ると、やがて右のようにちょろちょろ・・・と。
膨大な水量を誇る黒部川も、源流はこんな一筋の水流なんですね。
この水がまたおいしいんです♪

この雷雨の後の景色が、
前回の虹の写真だったというわけです。それにしてもポジフィルムっていいですね。今回、改めて見てみて、よさを実感しました。次回のアウトドア活動より、再び昔のレンジファインダーのカメラに
ポジフィルムを入れて撮影しようと思います♪
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テーマ:登山・ハイキング - ジャンル:旅行
上の廊下付近での緊張感を強いられる釣りや、五郎沢、祖父沢でのヒルやハチの恐怖も忘れられません。
>この五郎というのは、おそらく雷のことでしょう
私もそのように聞いたことあります、現役は引退してしまいましたが知り合いのマタギも雷の事を「ゴロ」とか「いかづち」を略して「いか」などと言ってましたよ。