ヒダル神という妖怪がいます。この妖怪は山中で人に憑き、意識朦朧とさせて、最悪の場合死に至らせるのだといいます。有名なところでは
ヤビツ峠。江戸時代の山廻り同心は、ヒダル神のために、自分の分とは別に握り飯を持ち、ヤビツ峠にさしかかるとそれを谷に投げて、逃げるようにその場を離れたと云います。
この山域は戦国時代より熾烈な合戦が山中で度々繰り広げられた場所で、屍が累々と谷や峠に横たわったことでしょう。ヒダル神の正体は、この
屍となったもの達の怨霊だと江戸時代には云われています。ここを通りかかった人間に憑依し脱力感を起こさせて動けなくしてしまう。実は、怪談CLUBで記事にしようとしましたが、後半になると、どうも怪談とは違う展開となるため、ずっとしまいっぱなしにしていた話でです。

下山中に、ふらふら
朦朧として動けなくなってしまう・・・ということが一度だけありました。これは経験してみないとわからない、ほんとうに恐怖な体験です。僕が、このヒダル神を体験したのは
会津駒ケ岳の稜線上にわずかな藪コギだけで突き上げる「
下の沢」を4名のクライミング仲間と登ったときのことでした。
このヒダル神以外にも、この時は散々なめにあっていて、たとえば
ゴルジュ突破のときはあわや墜落しそうになり、
泥の斜面(草つき)ではアックスを落としそうになり、後半の
核心の滝では・・・生まれてはじめて
沢で墜落を経験しました。クライミングジムと違って、本番での墜落は決してあってはならない、ということは知っています。知ってはいましたが、核心の滝でどうしてもホールドが見つからず「滝の中を中央を突破するか・・・」と体勢を変えた瞬間、バランスを崩し落ちてしまいました。
幸いにもこの時はセカンドのトップロープで登っていたため事なきを得たけれど、もしトップだったらと思うと・・・水流が激しく吸い込まれる細いV字谷の奈落の光景を思い出し、今でもゾッとします。
これらも散々な体験なのですが、まだまだ続きます。この日の避難小屋はけっこう満杯で、霧雨の中のハードなクライミングだった僕らはヘトヘトで、食事もそこそこに入り口横の雨に
濡れた地面にマットを敷き、シュラフにシュラフカバーをつけてごろ寝。しかし某山岳会(ここでは会名は伏せておきます ^^; )の宴会が夕方から始まります。その中には知った顔もあり、飲み会に誘われましたがそんな元気もなくて、丁寧に辞退。
宴たけなわで、喚声などは無視して寝られましたが・・・20時を過ぎた頃、オペラ歌手だという女性が歌曲を朗々と歌い始めてしまい・・・まさに地獄の一夜。オペラ歌手の所属する山岳会(笑)・・・早い人では18時には就寝しているので、これは迷惑です(^^;;
翌朝も雨。寝不足の中、必要カロリーだけを摂取するための携帯食を湯で胃に流し込んで7時に出発。どうせ汗でぬれるし、駆け下りれば麓まですぐだろう、という判断で雨具は着用せず出発。駆け下るため、ザック横でぶらぶらするヘルメットをザックに押し込もうとするがザイルがかさばり断念。そうこうしているうちに他のメンバーはいっせいに駆け下り、姿がみるみる遠くなる。それを追って僕も走る。

途中立ったまま数分間の小休止時に合流し、今度は僕が先頭。すでに半分以上くだったあたりで、突然頭が朦朧として全く動けなくなってしまいました。僕は木の根元にザックを置き、その上に雨具を羽織って座り込みます。動けなくなるという恐怖は本番での墜落と同じで、生まれてはじめての経験です。これは非常に怖いものです。行動食にしていた
黒糖ピーナッツがぜんぜん効きません・・・そうこうするうちに後続のメンバーが追いついて、症状を分析してくれます。
カロリー不足かもしれないとチョコレートを食べましたが・・・効果なし。メンバー中、会や連盟の重鎮でもある一番の熟達者M氏が「これは
ダルだなぁ」と言いながら、予備食の握り飯をひとつ僕に食べさせ、もうひとつを藪の中にポイと放り投げました。後で聞いた際に、「放り投げたのはおまじないだよ」とM氏は笑っていましたが、このときに初めてダル・・・つまりヒダル神を知ったのでした。ご飯パワーで妖怪封じ、といったところです(^^;;
握り飯を食べて水を飲んだ僕は、嘘のように動けるように。これは本当の話です。この瞬間、身体の周囲を取り巻いていた濁ったような何かがすーっと消えたような、スッキリ気分になりました。「どうだ、動けるだろ」とのM氏の言葉に、僕は立ち上がると、そのまま他のメンバーとともに、ふたたび駆け下りました。登り8時間少々、下り1時間・・・かなりのハイペースです。
で、この後も初めては続きます。もしかしたらメインエベントかもしれません。
会津・桧枝岐の
無料温泉で着替えて帰ろう、ということで温泉に。細い道の沢横の、知らなければ通り過ぎてしまうような“
ほったて小屋”の中に入ると・・・いきなり小さいながらもかけ流しの見事な岩風呂。ですが、脱衣所も床板しかありません。それに・・・・目の前には
裸のかなり若い女性数人のお尻・・・20代前半の女の子たちが身体を洗っているではありませんか!?。
つまり、混浴でした。女の子たちもこちらをちらちら見て気にしてます。それを横目に服を脱ぐのですから、めちゃくちゃ恥ずかしいです。この後、さらに2名のOLさんらしき観光の綺麗な女性が入ってきて、いきなり横で服を脱ぎ始めました。見ているこっちが顔から火が出るほどの恥ずかしさです・・・湯船に逃げ込みますが、掘り下げている湯船なので、真正面には身体を洗う女の子のお尻が・・・横を見るとそこにもニッコリ微笑む女性が「こんにちは・・・」とカワイイ声・・・うひょー、もうだめです(^^;;
あまりに目のやり場がないので、僕ら男性4名は、10分ほどで退散しました。こんなたくさんの女性と狭い湯船で混浴したのも、生まれて始めての経験でした(^^;; 温泉は、やっぱり男風呂が落ち着けていいなぁ、と実感しましたね。いざ混浴になると、男は弱者です。こんな初めてだらけのことがたくさんあったため、この会津駒ケ岳の沢登りは、女の子のオッパイ、お尻の残像とともに今でもはっきりと記憶に焼きついています(^^;;
にほんブログ村
- 関連記事
-
テーマ:アウトドア - ジャンル:趣味・実用