
雪山には一種独特の特有な匂いがある。
あちこちの山が冠雪する今の時期になると、鼻腔の奥にかすかにツン・・・と雪山の匂いがして、憧れのひとと初めてデートする直前のような、そんなそわそわとした落ち着かない気分になる。
一日しか休みがとれず、どうにも身動きが取れない週末など、もう無意識のうちに身体が反応し、納戸からガチャガチャとクランポンやピッケル、スノーアンカーだのを無闇やたらに引っ張り出しては撫で回したり、すでにギンギンに研いであるクランポンの歯に鉄ヤスリをカタチだけ当ててみたり。そうしていることで、少しでも雪山に近づいたような気がして落ち着くことができるから不思議だ。
さて、出かける場所は様々で、山仲間とは大好きな白馬の主稜を筆頭に、奥穂や谷川あたりに向かう。しかしいっぽうで、のんびりと雪と戯れに磐梯あるいは鹿沢高原、霧ヶ峰・蓼科、北八ッなどにフラリと向かうことも多い。中でもひと冬に何度か訪れるエリアが奥蓼科・霧ヶ峰と鹿沢高原・湯の丸山周辺で、特に鹿沢高原で雪中野宿しながらスノーハイク(または山スキー)していると、吹雪の晩などまるで戦前の登山黎明期にタイムスリップしてしまったような、妙な気分に浸ることができる。
おそらくそれは、鹿沢高原にある「雪山賛歌の碑」のせいだろうと想像している。雪山賛歌は西堀栄三郎氏が京都大学山岳部の冬季合宿のとき、あまりの風雪に停滞を余儀なくされ、合宿の拠点としていた温泉宿・紅葉館で仲間と歌詞を持ち寄って作詞したもの。
紅葉館は必ず立ち寄り湯するほど大好きな温泉で、そのたびに、ここで雪山賛歌が生まれたんだなぁとなんだか遠い日に思いを馳せてしまう。しかし、基本は野宿なので、山中あるいは裏手の沢沿いのとある場所でスノーキャンプすることが多い。
スノーハイクのルートは実に無数。おまけに雪山は、夏と違ってルート設定は自由自在。地形図とコンパスで好きなように雪山を歩くこともできるし、たとえば「休暇村から村上山」、また「地蔵峠から湯の丸山」の2コースは、スノーシューをつけてのスノーハイクが最高に楽しめる。景色が最高、リスクが少ない、歩くのが楽しい、という三拍子揃ったコース。
で、スノーハイクを終えたら、しなびた紅葉館もいいけれど、ちょっとレトロモダンに鹿澤館が気分良し。鹿澤館の本館が建てられたのは昭和9年。いたるところにアールデコ調の装飾がなされていて、ほれぼれしてしまう。温泉は露天こそないものの、ゆったりとした浴室の大きな湯船になみなみと源泉が掛け流されている。

一見何の変哲もない湯と思うのだけれど、身を浸してみると、まるで天女の羽衣のごときなんとも言えぬ柔らかく上質な湯なのだろう。出たり入ったり。そのたびにざばざばと湯船からおびただしい湯がこぼれる。

鹿沢温泉「鹿澤館」
・炭酸水素塩泉のかけ流し・天然温泉100%
・マグネシウム・ナトリウム炭酸水素塩泉。
・循環無し。加水・加温無し
・場所:群馬県吾妻郡嬬恋村大字田代1017−58
・電話:0279-98-0008
・宿のHP(スノーハイクおすすめコース)
・鹿沢休暇村→たまだれの滝鹿沢温泉と新鹿沢温泉を結ぶ湯尻川遊歩道の途中にある落差10メートルの滝。幾もの水が繊細に岩の間から流れます。休暇村鹿沢温泉から遊歩道で滝までスノーシューイング。
・村上山鹿沢温泉にある山で、スノーハイクコースとしてお勧めです。雪の森の中に登山道があるため風(吹雪)から守られているうえ、雪崩箇所も無し。山頂まではのんびり歩いて約2時間半程度。歩いていると雪の森の中には小動物の足跡が無数にあって、アニマルトラッキングなんていうネイチャー遊びも堪能できます。森とは言っても背が高くとても明るく、広々した気持ちのいい森です。ご家族連れで気軽に最高のスノーハイクが楽しめるお勧めコース。
・湯ノ丸山やはりベスト1のスノーハイクコースは湯の丸山。美しい樹氷の森を抜け、眺望のいい雪の斜面を登ること2時間半ほどで、これまた360度の眺望を堪能できるパノラマビュー。八ヶ岳や浅間山など最高の景色と雪山気分を存分に楽しめる。地蔵峠の無料駐車場で身支度を済ませ、目の前のスキー場横の斜面を登ります。下りは斜面をお尻で滑りおりるシリセード!豪快にあっという間に下れます。
・その他雪山賛歌の碑がある鹿沢の登り口から「角間峠」など。
◆湯の丸エリア記事リンク
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